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Wednesday, 8月 18, 2010
HR&POWERトレーニング
竹谷 賢二(ポラール・HRTアドバイザー)

ハートレート(心拍数)を運動強度の基準として用いるトレーニングに加えて、昨今ではパワーという指標を基準としたトレーニングが年々盛んになってきています。
サイクリングにおけるパワーとは、ペダリングの出力、エンジンである自分の馬力、といったほうが理解しやすいかもしれません。
100馬力の一般車よりも、300馬力で軽い車体のスポーツカーの方が速く走れますよね?
この馬力、パワーを数値化すると何がわかるのか?というと、心拍数や速度、ケイデンスでは分かりづらい、自分の性能が分かるようになるのです。
では、パワーが分かると何が出来るのか、と言うと次の通りになります。
1)より正確な現状の認識
2)トレーニングによる向上の確認
3)あるいは他の人との能力の比較
4)トレーニング負荷のさらなる適正化
5)動作改善の数値化
1)より正確な現状の認識
パワーはワット(watts)という具体的な数字で、示されます。1馬力は745Wです。一般的なサイクリストでは一時間あたり100~200wくらいの平均パワーですが、エリートサイクリストでは300~400wにも達し、2~3倍の発揮を出来るのです。この一例のように自分の性能の評価であるとともに、その細かい内訳や、レースで何が出来ているのか、ということも分かってきます。
心拍とパワーの関係で言うと、心拍数と言う呼吸循環器の指標から身体の負担を見ていますが、パワーは脚がペダリングで実際に発揮した数値をみていますので、よりダイレクトでタイムラグのない、負荷そのもののを見ることが出来ます。
心拍が上がって速度が上がるのではなく、速度を上げようと動作をしてパワー発揮しをして速度が上がり、それに対するエネルギーなどの代謝のために、心拍数を上昇していきます。需要と供給の関係にとも言えます。この心拍数とパワーの関係を見ていくことで、どの強度でどれ位のパワーが発揮できるのか、と言う性能が分かります。
パワーの中身をみていくと、力x動作速度=パワーと言うことが出来ます。
スポーツ解説で間違って引用される、筋肉隆々で重量型の選手を評するときに「あの選手はパワーがある」は不適切な表現で、力がある、別のものとして分けて言うべきなのです。小柄で、小さな力しか出せなくても、速く動かせれば、それも高いパワーといえるのです。
サイクリングでわかりやすく言うと、一漕ぎ当たりの有効入力の大きさx有効入力の速度、 =トルクxケイデンス という理解でまずはOK。 このバランスはどうか、を見てくことで、自分のタイプや強化すべきポイントも理解できます。 あるいは、同じパワーを平坦や上りで差が出るのか、同じだけ出せるかの確認も役立ちます。
レースの時に、どれだけの時間、どれだけの回数、どれだけのパワーを出しているのか、が記録を見れば一目瞭然になります。たとえ心拍数という自分の努力、身体的負担が一定だったとしても、出力発揮であるパワーが落ちたときに、遅れていくことになります。
2)トレーニングによる向上の確認
トレーニングを継続的に見てくことで、数値変化から向上がより分かるようになります。
心拍数では、どれくらいの時間どれくらいの強度で持続できた、というような利用をしますので、持続時間が伸びた、という向上は確認できますが、パワーがあれば同じ強度でより高いパワーを発揮出来るようになった、という向上の確認が簡単にできるようになります。
瞬間最大、30秒間、1分間、3分間、6分間、30分間、60分間などの単位時間あたりのパワーを見てくことで、どのようなトレーニングをやったらどのパワーが上がったかと言う因果関係も明確になります。
3)あるいは他の人との能力の比較
前述のとおり、100~200wと300~400w、というように、どれだけだパワー発揮が出来るのかで、ずばり他人との能力の比較が簡単にできてしまいます。レースで自分よりも出力の高い人に勝つには、戦術をもって対抗するか、相手のトラブルを願うしかないと言うことです。ですから、トレーニングで充分に能力を高めておかなければなりません。
またパワーを考えるときに、重要なのが自分の体重です。これをパワーで割ると、パワーウエイトレシオが分かります。1kgの物体をどれだけのパワーで進めることが出来るか、を表しています。これは特にヒルクライムなどで、その数値のままに記録が出ます。パワーウエイトレシをの高い人ほど、速いのです。ちなみに現役時代は1時間の平均が340w、体重64kgでしたので、パワーウエイトレシオは5.3となります。
これを比較すれば、自分がどのレベルにあるのか、一目瞭然です。日本のトップになるにはそのレベルに、世界のトップになるには、そのレベルに達していなければなりません。
選手にとっては自分の実力を直視することになるので、ある意味残酷な指標かもしれませんが、一般サイクリストにとっては、パワーと体重のバランスを取るためにとても有効な指標の一つです。
4)トレーニング負荷のさらなる適正化
心拍ではトレーニングゾーンと言う面で捉えていたトレーニング強度を、1ワット単位で小刻みに点で捉えることで、より適正化を図ることが出来ます。
パワーではなく速度、あるいは同じ距離の到達タイムでも負荷設定出来ますが、風の影響、機材の影響、勾配の影響など、さまざまな抵抗の変化により、一定ではない可能性がありえます。
また、心拍数も、温度、湿度、体調、などに影響を受けますので(この辺はまた次回に)、パワーによる数値設定がトレーニングの定格化をしやすいのです。
向上させたい能力に応じて、パワーの大きさ、持続時間+休憩時間、繰り返しの本数、とアレンジしていきます。
5)動作改善の数値化
パワーはペダリングの出力発揮ですから、ペダリング動作と関係してきます。ライディングフォームやバイクフィッティングにも影響を受けます。この動作のスキル、円滑さ、効率、これらを向上させると、有効入力の強さ、速さが向上し、パワーが上がります。
トライアスロンなど空気抵抗に大きく影響を受けるバイクでしたら、同じパワーを持続出来る範囲で、前面投影面積の小さいエアロポジションを作るというような活用もできます。
POLAR パワーセンサーW.I.N.D.では、左右のペダリングのパワーバランスや一回転あたりの力のムラというペダリングインデックスも数値で確認することが出来て、スキルの向上にも役に立ちます。
以上から、心拍という指標にパワーを加えることは多くの方にとって有効ですが、とりわけ、よりディティールを深く掘り下げ、より高い精度で、より高い成果を得たい、そしてそのためのトレーニングをしっかりと行っている、というサイクリストにオススメしたいと思います。
なぜならパワーがわかれば速くなるのではなく、パワーを常に高め続ける、たゆまないトレーニングが速く走れる能力を高めるのですから。
まずは、しっかりと心拍を指標にトレーニングを確立して、それからパワーをアドオンしていくことを多くの方にはオススメしたいところです。