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「2010 モンブランに向け」

Wednesday, 8月 25, 2010

2010 ウルトラトレイル・デュ・モンブランに向けて


鏑木 毅



 












プロフィール:


日本のトレイルランニングの国内第一人者として富士登山競走や日本山岳耐久レース数々のレースに出場し、数々の競技大会で優勝記録を持つ。ポラール・HRTアドバイザーとしても活躍し、永年に渡り、ポラールを使用したトレーニングを実践。毎月開催されるポラール・フィットネス・アカデミーでは自らの経験を活かした講義、実技を披露。





 



ザ・ノース・フェイス「ウルトラトレイル デュ モンブラン(UTMB)」は、フランス、イタリア、スイスの三カ国を走り、ヨーロッパ最高峰モンブラン(4810m)山群を一周する距離166㎞、累積標高差(総高度9400m)の世界で最も過酷で、しかも「世界最高峰のウルトラトレイルレース」と呼ばれています。



ここ3年このレースで、自分自身の能力を最大限発揮したく、試行錯誤の日々を送ってきました



初出場した2007年は12位、2008年は4位、昨年は念願の3位に入ることができました。そのため今年は周囲からそれ以上の結果が求められる、とのプレッシャーがありますが、私はこのレースは、「人間の限界を越えたところで勝負が決まる」と考えています。



ウルトラトレイルレースは、まだ新しいアウトドアスポーツです。私は今まで100kmを越えるレースを何度も経験してきました。自分ではおぼろげながらこのように体をつくっていけば、うまくいくという感覚ができましたが、その方法がベストなのかは未だ確信が持てなく、いわば毎回自分の体で「人体実験」を行っているような状況です。



今回は、2009年の同レースの私の心拍データを分析し、その結果を踏まえた取り組みをご紹介したいと思います。



 




 



この時のデータからわかることは、レース序盤は160拍/分を越えるような高心拍の領域があるものの、レース全体を通して150拍/分以下の低強度の心拍となります。とりわけレース時間が12時間を越えるあたりから、心拍データは130拍/分という極めて低い心拍数でレースは推移します。低心拍な運動であるから一見「楽な運動」と誤解されるかもしれませんが、これはいわば「体が心拍数を上げることができないほどに衰弱している」といった状況で、肉体的な疲労は、短時間(概ね8時間以下の時間で終了するレース)のレースでは経験しえない非常に激しいものとなります。更に興味深いことは、この時間帯になると下りの心拍数が上りの心拍数を上回る(スタート後約12時間までは逆)といった通常のトレイルランニングのシーンではありえない状況となります。これは前述の通り、上りでも、身体的な衰弱が激しいため心拍数を上げることができないのに対して、むしろ下りでは位置エネルギーにより、体に外在的な負荷がかかるために、心拍数が上昇するという超ロングディスタンスレースならではの特異的な現象が起きます。



さて、前年のレースでのこのような心拍データを分析し、2010年のレースに向け「低負荷、低心拍、長時間」のトレーニングのウエイトを極端に高めることにしました。
この取り組みを実施するにあたり、年明けから、レース本番までの8ヶ月間を概ね以下に記載した3つの期間に分け、取り組みました。



 























1月~3月:低心拍・長時間トレーニングを中心
110拍~120拍/分の領域でのトレーニングを実施








4月~6月:低心拍・長時間トレーニングベースとしながらも、中心拍(130~150拍/分)、加えて高心拍(150拍/分以上)のトレーニングのウエイトを徐々に増やす。








7月~8月:中心拍・長時間トレーニングベースとし、ときおり高心拍・長時間(実際には途中休憩を含む)トレーニングも加える。




 



この間、この練習計画に集中するために、他のレースにはほとんど出場しませんでした。唯一のレースとして5月初めに「北京エンデュランス100k」に出場し、運よく連覇することができました。この段階では、高負荷なトレーニングを実施していなく、いわば体調的には「片手落ち」の状態でしたがそれにも関わらず優勝できたのは、まさに第一期(1月~3月)の低心拍・長時間トレーニングが非常にうまくいった証拠だといえます。



例年とは異なる調整方法で果たしてどのような結果になるかはわかりませんが、成否に関わらず、ウルトラトレイル攻略のための何らかの方策がわかるはずです。このような様々な練習方法や成果を蓄積し、ウルトラトレイルの最も合理的な攻略方法を分析し、皆さんにもお伝えしていきたいと思っています。



気負わず本番を迎え、美しい景色の中、レースを是非とも楽しみたいと思います。



 



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