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ロングトレイルレースを走りきる 鏑木 毅

Wednesday, 2月 23, 2011


 ロングトレイルレースを走りきる



鏑木 毅 (プロトレイルランナー)



 



トレイルランニングの盛り上がりとともに、近年、長距離レースの数が増えてきました。今シーズンもまた新規のロングのトレイルレースが多数開催されるようです。



ロングトレイルレースとは概ね50km以上の距離のものを指します(欧米では100km以上)。トレイルレースの場合は、ロードレースと異なり起伏に富んだ山岳地を走るために、一概に距離だけではその大変さを計ることができないという難しさがあります。フルマラソンを2時間30分ほどで走るトップ選手でも、同様の距離のトレイルレースに4時間から5時間費やすということも珍しくはありません。ましてや一般の方々がそれ以上の距離のレースに参加するとなると10時間以上、レースによっては20時間もの間、動き続けなければなりません。明らかにフルマラソンを目指すトレーニングのプログラムとして取り組む必要があります。



さて、このような超長距離を目指すにあたり念頭に置かなければならないことが2点あります。



① ロングトレイルレース(ロングに限ったことではありませんが・・)の場合には、いかに「歩き」をうまく入れるかが重要なポイントで、歩く→走る→歩く、の上手なコンビネーションを知ることがとても重要となります。ロードランからトレイルランを初めた方は、走ることに固執しがちになりますので特に注意が必要です。



② 低心拍ゾーンを保ちながらレーストレーニングを進める。これは①の事項と関係しますが、上りなど身体的に負荷がかかりやすいパートでは、知らず知らずに心拍数が上がってしまいます。なるべく高心拍ゾーンに追い込むことなく、一定の心拍ゾーンをキープすることがポイントになります。



 



~何故、低心拍ゾーンをキープすべきか~



 



人間のエネルギーには「糖エネルギー」、「体脂肪エネルギー」の2種類が存在します。この2つはその生成過程や使われ方において特徴があります。糖エネルギーは一般的に使いやすいが量が少なく、個人差がありますが約2000kcalほど体内蓄積が可能です。一方、体脂肪エネルギーは使われにくいが量が多く、1kgの体脂肪で約9000kcalとなりますから、体重60kgで体脂肪率10パーセントの方の場合54000kcalの蓄えがあり、ある意味糖エネルギーと比較すれば無尽蔵に存在するといえるでしょう。長時間のレースでは、この体脂肪エネルギーをいかに効率良く使える身体にできるかが大きな鍵となります。



 



上記の図表は、そのことを顕著に表わしています。運動量を心拍数と置き換えると、高心拍になるほど糖エネルギーに頼りがちになるのに比べ、低心拍ゾーンでは体脂肪を使いやすいという特徴が出てきます。



では低心拍とはどのくらいの心拍を指し示すのでしょうか。以下に私の2009UTMB(ウルトラトレイル・ド・モンブラン)のレース時の心拍推移を掲載します。


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上記のレースは23時間もの競技時間を要しますが、スタート直後の高心拍ゾーンや前半の上りセクションなど一部を除き、主に体脂肪エネルギーに頼っていると思われる中盤以降は概ね130~140拍/分間前後でレースを推移しているのがおわかり頂けると思います。私の場合、筋的なダメージによるトラブルはさておき、この心拍領域であれば数十時間に及び動き続けることが可能といえます。



 


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個人差はあるものの



(220-年齢)×0.7



あるいは 最大心拍数を計測されている方は



最大心拍数×0.7



※ポラール スポーツゾーンのレベル3に相当



が概ねこの強度といってよいでしょう。



 



~体脂肪燃焼を意識したトレーニングについて~



 



問題は、いかにすればこの体脂肪燃焼サイクルを構築できるかです。



前述したように糖エネルギーは使いやすいエネルギーですので通常だとこちらに頼りがちになってしまいます。



より長く動き続けることで、体脂肪を使うサイクルを身体に覚えさせることがポイントとなります。そしてこの際には低心拍(概ねスポーツゾーン3)で行い続けることがとても重要になります。



休日に3時間走ろうと計画しても、出だしから高心拍で追い込んだだめ、糖エネルギーに頼りすぎる走りになってしまい、僅か1時間でバテてしまったというのでは意味がありません。心拍管理をしながら、できる限り目標のゾーンで長時間のトレーニングを実施することが体脂肪の燃焼サイクルを構築する最大のポイントとなります。



 



春以降のロングレースを目指すのであれば、月に1回以上、1回につき4時間以上(長ければ長いほど良い)のロングトレイルのトレーニングを実施しましょう。



途中できつくなったら歩き、短めの休憩も入れながら、なるべく動き続けるようにしましょう。



このトレーニングフィールドは必ずしもトレイルに拘る必要はありません。私の場合には時間を有効利用するために自宅からスタートし、近くのアップダウンの多い住宅地や里山のトレイル、川沿いの遊歩道などを経由し自宅に戻るなどのコースをとることもあります。この場合ロードでもなるべくアップダウンのあるコースを選ぶようにしましょう。探せば楽しいコースは身近にたくさんあるはずです。遊び気分で、そぞろ走りを楽しんでください。



トレーニングを進めるうちに、実際に体脂肪を使える身体になっているのか不安に感じる時があります。身体にはエコカーのように燃費を計るゲージが有るわけではないので、正確に把握することはできないと思われがちです。



しかし、いい方法があります。このトレーニングがうまく進むと、以前と同様の心拍数でもスピードがアップするのを実感できるようになります。走行速度を知るためストライドセンサーを設置し、フラットな安定した走路で140拍/分間(スポーツゾーン3相当)をキープしながら走ってみて、以前よりスピードが上がっているのが確認できれば、トレーニングがうまくいっている証拠となります。



また、体感的に、身体が重くなる、だるくなるといった疲れを感じずに走れる時間が次第に長くなっていく傾向が見られれば、同様にその指標となります。



このトレーニングからはきっと大きな効果を得られるはずです。くれぐれも楽しむ心を忘れずに取り組んでください。