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最大限の力を発揮する為のプログラミング 鏑木 毅

Wednesday, 3月 30, 2011

レースで最大限の力を発揮するためのトレーニングプランの立て方

鏑木 毅 (プロ・トレイルランナー)

トレーニングの基本的な考え方として「超回復」がある。これはトレーニングを実施すると、一旦は体調は下がるが、その刺激で身体が再生するためトレーニング以前の状態よりもむしろ向上することだ。
そもそもトレーニングは、一旦は身体の一部の機能にダメージを与えることになる。このため身体の防衛本能として、破壊された機能がトレーニング前のレベルより向上することこそがトレーニングの効果といえる。
そのためトレーニング自体は、自己の運動能力を高めるものではなく、あくまで回復する過程で、よりこの能力が高まるといえる。このためトレーニング後の栄養補給や休息を含めての一連の行為を、トレーニングとして捉えるべきだと考える。
日常のトレーニングでは常に、この超回復の原理を意識し、また利用してトレーニングを合理的に実施して欲しい。

図表1
《超回復の考え方》


現段階が「1」だとすると、トレーニングを実施し疲労のために一旦体調は「2」に下降。やがては超回復し「3」になる。結果的にトレーニングで「1」から「3」のレベルに体力レベルは向上する。このサイクルを続けると、最初の「1」から、「4」へ大きく向上する。

図表2
《オーバートレーニングの逆効果》

 

逆にオーバートレーニングとなった場合を考えると、現段階が「1」とする。トレーニングを実施し、疲労のために一旦体調は「2」に下降する。しかし、超回復の途中過程で完全に疲労がとれていない状態でさらに「3」へと負荷をかけると、逆に「1」から「4」へと体力レベルは下降してしまう。トレーニングを継続することで、成果が損なわれてしまうというパターンがこの状態なのだ。ここからわかるように身体が回復する時間をしっかりとることが重要だ。

《超回復を利用したトレーニングの実際例》
実際上の週間プランは、図表1のようにそう単純なものではない。
概ねトレーニングの量や質から「ハードトレーニング日(略称「H」)、「ミドルトレーニング日(略称M)」、「イージートレーニング日(略称「E」)」、「休養日(略称「R」)」とする。

各トレーニングの心拍数からみた強度は以下のとおり。基準となる練習時間は1時間から2時間程度を想定してみる。
◆ハードトレーニング
(220-年齢)×0.9~0.8
◆ミドルトレーニング
(220-年齢)×0.8~0.7
◆イージートレーニング
(220-年齢)×0.7以下
ただし、上記はあくまで目安であり、例えばイージートレーニングの心拍でも4時間以上のランニングを実施すれば、これはハードトレーニングの範疇となる。ロングトレイルのレースを目指すのであればむしろこのようなトレーニングのボリュームを増やす必要がある。

《週間トレーニングモデルについて》


図表3

 

図表3は、週末にポイントを置いたトレーニングモデルだ。土曜、日曜とハードトレーニングを行うと疲労で体調は大きく後退する。このため月曜日は休養日とし、火曜日はイージートレーニングで体調を徐々に上げ、回復した段階で水曜日にミドルトレーニングを実施し、木曜、金曜は週末に予定するハードトレーニングに向け体調をあげる。

図表4

 

図表4は、週間に2回のハードトレーニングを置くパターンだ。主に中上級者向きのトレーニングパターンと言える。このパターンの特徴として週に2回のハードトレーニングを取り入れ、敢えて休養日は作らない。図表3のパターンよりは大きな成果に結び付きやすいが、慢性疲労状態とならないよう細心の注意が必要だといえる。

《ハードトレーニングを中心にプランニング》
一週間のトレーニングメニューはハードトレーニングをどの日に実施するかによって流れができるといえる。ハードトレーニングとは、量をメインとして考えるものと質をメインとするものと2種類ある。
(220-年齢)×0.9の心拍数での30分間~40分間のトレーニングは典型的な質をメインとしたトレーニングといえる。
一方、低心拍でも時間が長い
(220-年齢)×0.7の心拍数での4時間~6時間のトレーニング
などは運動量に重点をおいたトレーニングといえる。
この2種類のハードトレーニングをどのようなバランスで実施するかは、目標とするレースの距離によって異なる。もしロングトレイルレース(概ね50km以上)を目指すのなら、量を求めたハードトレーニングに重きを置くべきだろう。

《イージートレーニングこそ最も重要》
上記の図表3・4の中でもわかるように、実際のトレーニングシーンでは実はイージートレーニングの頻度が最も多い。前述の通り、トレーニングは回復期があって初めてその効果が得られるものなので、その意味からもイージートレーニングは最も重要なトレーニングといえる。
とはいえイージートレーニングは単に回復させるためだけのトレーニングではない。体調を回復させつつも、トレーニングの連続性を保つ意味をある。もし完全に休養するとトレーニングの連続性が損なわれる可能性がある。私も過去に経験したが、例えばハードトレーニングと完全休養日を交互にとるトレーニングパターンでは、せっかくのハードトレーニングの成果が実を結びにくい。

(220-年齢)×0.7がイージートレーニングの基本心拍

私のおすすめは、イージートレーニングは走るだけにこだわらないということである。
例えば図表4の場合、土日をトレイルやロードで追い込んだ場合には、脚部に大きな疲労が残っているので、自転車や水泳、あるいはスポーツジムの上半身を中心的に使う有酸素マシーン(クロスカントリーマシーンなど)などを使うトレーニングを実施する。
このことで、脚部の疲労回復を図りながらも、トレーニングの連続性を保つことができる。

今回ご紹介した週間のトレーニングモデルは、あくまで一例にすぎない。個々人により理想のパターンは異なる。自分の疲労状態にたまには意識を集中させ、より効果の高い自分オリジナルのパターンを模索して欲しい。